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株式会社ジョイゾー(東京都江東区)

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株式会社ジョイゾー
(東京都江東区)

【写真】四宮さん ジョイゾーは2010年(平成22年)設立。大手クラウドサービス製品に対するコンサルティング・システム開発、クラウドツールプラグインの開発や販売などを行っている。
従業員数は30名(2023年12月現在)。
今回は、取締役副社長の四宮琴絵さんからお話を伺った。

リモートワーク中心だからこそ社内コミュニケーションの活性化を意識し、バーチャルオフィスや社内チャットを上手に活用している

まず、働きやすい環境づくりと社内コミュニケーションの工夫についてお話を伺った。

「当社では、2016年からリモートワークを導入しています。新潟や札幌に住んでいるエンジニアをリファラル採用(社内外の信頼できる人脈を介した採用)することになったため、それがきっかけになりました。当社の業務はクラウドサービスの利用をメインとしており、基本的には会社に来なくても開発ができるということで、事務系以外の従業員についてはリモートワーク可としました。その後、2020年にコロナ禍となり、全員出社しないという方針に決定し、事務系も含む全従業員がフルリモートワークできるように、家でも仕事ができる環境を整えました。」

「現在は、仕事でのコミュニケーションが取れる関係性を築くため、新人社員には出社を促しています。実際、平均週2回程度出社している社員が多い状況です。また、月1回の全体会議は基本出社としていて、午前中に全体会議を行い、昼食を皆で一緒に食べる形式にしています。」

【写真】パブリックスペース 「現在のオフィスは2021年に完成しました。これからはリモートワークで働く従業員が多くなると思うので、オフィスは“出社する場所”では無くなるということを、社内で話していました。それならば、従業員が行きたくなるようなオフィスを作りたい、みんなで集まってイベントやセミナーができるようなちょっと広いスペースがとれる場所がいいということで、現在のオフィスに移転しました。リモートワークが多い前提ですので、執務エリアよりもパブリックスペースを広く取っています。」

「リモートワークが多いからこそ、社内のコミュニケーションをたくさんとることを意識しています。まず、バーチャルオフィスを使っているので、出社したら必ずそこにログインしてもらいます。オフィスに出社した場合でも、バーチャルオフィスにも必ず出社します。また、社内チャットで、朝の挨拶と、今日こういう仕事をしますという予定を書いて投稿してもらっています。社内チャットでは、雑談もどんどんしていいということを伝えています。こうしたことによって、出社しているかを把握できますし、いつでも話し合える環境ができていると思います。新卒入社の従業員は3か月間、中途入社の従業員は1か月間、出社してもらい、従業員みんなとコミュニケーションがとれるようになった上で、リモートワークも可能としています。」


バーチャルオフィス

「また、セミナーに参加した際や、ユーザー会に出席した際には、その様子を実況するようにX(旧Twitter)でつぶやいてもらったり、社内チャットにも実況のスレッドを立ててスクリーンショットを貼りながら内容を共有してもらったりしています。セミナーやユーザー会には参加していなくても、Xやチャットを後追いしたら、参加した従業員たちが感じたことやメモしておきたいことを上げてくれているので、参加したような気持ちになれます。」

「また、手のひらサイズの弊社公式キャラクターのマスコットを作成しており、地方に仕事に行ったりワーケーションに行ったりするときには、その子を連れて行って一緒に写真をとって、〇〇に行ったよというのを社内外に発信してもらったりもしています。いろいろな楽しいこともシェアしてほしいと伝えているので、社内チャットでも、こんなものを食べたとか、こんなきれいなところがあったとか、どんどん発信してもらっています。それを見ると、行った気分になれたり、今度行ってみたいなと思えたりして、社内のコミュニケーションにつながっています。外の刺激を発信してくれることがとても大事だと思っています。そのため、不在の際、自分の仕事を任せてしまって申し訳ないと罪悪感を抱いたりするくらいならば、事前にちゃんと業務をお願いして、思いっきり楽しんでほしいと伝えています。そこで仕事の調整がスムーズにできるということは、日頃からコミュニケーションがとれている証拠でもあると思っています。」

自己評価や他者評価の機会を意識的に設けることで、上下関係での意識のすれ違いが生じにくい環境を作っている

次に、経営層や管理監督者と従業員との間のコミュニケーションや意識のすり合わせの工夫についてお話を伺った。

【写真】執務室 「まず、1on1ミーティングを定期的に実施しています。基本的には、各所属チームのマネージャーと部下との1on1ミーティングを月1回のペースで、今も継続しています。さらに、経営層との1on1ミーティングとして、当初は社長が対応していたのですが、途中から私(四宮さん)が引き継ぎました。今は従業員数が増えたので、入社1年目の新卒入社と中途入社の従業員は私が担当し、入社2年目以降の従業員に対しては、1on1ミーティングの概念を拡張して、外部の専門家にお願いしています。入社3年目までは1か月に1回、4年目以降は2か月に1回というペースで、1回の時間は30分です。外部の専門家は、私が信頼しているHR(人的資源)分野の方です。外部の専門家と話した内容は、私たちには伝わらないようにしています。その上で、会社としての課題がある場合は、個人が特定されない形で報告を受け、取り組んでいます。外部の専門家が加わったことで、外部に相談できる相手がいるという安心感や、外部の目で私たちのコミュニケーションの取り方や考え方についてアドバイスがもらえるというメリットを感じています。もちろん、入社2年目以降のメンバーでも私と面談したいという希望があれば受けています。」

「また、入社1年目の従業員は日報を、入社2年目以降の従業員は週報を書くこととしています。日報では、今日どんな学びがあったかということを振り返ってもらっています。週報では、自分自身のキャパシティを“10”とした場合、今週はどうだったのかを書くこととしています。例えば、『忙しかったから“11”』や、『余裕があったから“8”』など、それぞれ自分のキャパシティと照らし合わせて主観で書いてもらっています。どのような業務に何時間使ったかの確認など、評価するために行っているものではなく、もしキャパシティに対して業務量が多いと感じていたら、『何がどうなっていて、そのように感じているのか』ということについて、コミュニケーションをとるきっかけづくりとして考えています。週報では、他にも、今週の自分自身の状況報告として、『娘と一緒に〇〇へ行った』や、『〇〇を食べたらおいしかった』、『推しを毎週紹介』など、皆それぞれコメントを書いてくれています。社長も、それを見るのを楽しみにしているようです。」

「従業員に対する評価は、入社3年目以上の従業員については、年俸交渉制を導入しています。一人一人が経営陣に対して、『今年度はこういうことができると思うので、いくらください』という交渉をします。その中で、年棒金額の根拠を示す必要がありますので、これまでの実績や、こういうことができるようになってきたということなどを説明してもらいます。経営陣からは、会社として期待していることや、会社として払える範囲などを話しています。当社では、会社の売上や販売管理費といった経理財務情報は誰でも閲覧できるようにしていますので、これだけの金額をもらいたいということはこれくらいの売上が必要で、そうなると、この仕事をどうやっていけばいいのか、といったやりとりにつながっていきます。」

「交渉するためには、自分のスキルが今どのくらいの位置にあるのか、会社に対してどういう貢献をしているのか、といったことをアピールする必要がありますので、まず自己を振り返って評価するという準備が必要です。中には自己評価が低いのか、アピールが無い方もいます。その場合、アピールが無いから年俸が低くていいとは判断せず、『日頃、こういうこともやっているんじゃない?』、『この業務は私たちとても助かっているんだけど、アピールしないの?』といったフィードバックをしますし、『ここはこういう形だったらできると思うんだけど、チャレンジしてみない?』などと伝えたりもします。自分自身の今のスキルやキャパシティを踏まえた上で、次にどういうキャリアプランを描いていくのかというところまで話していくので、楽しいです。」

「自分が今どこにいるのかという立ち位置があいまいになってしまうと、相手に過度に期待をしたり、相手から過度な期待を受けていると勝手に思い込んで負担に感じてしまったりするのではないかいと思っています。そうならないように、すり合わせをしていきたいと考えています。」

【写真】全体会議 「給料を高く上げていれば社員が満足するかといったら、そうではないということをとても感じています。給料はそこまでいらないから時間を別の形で使いたいや、学びに投資をしてほしいなど、それぞれの従業員にとってのインセンティブは、全く違います。そのため、どうすればエンゲージメントを高く保てるのかということを経営側も考えなければなりません。経営者と従業員の間に多少の隔たりはあるとは思うのですが、ここの間のコミュニケーションが、上から一方的に行われるようにはしたくないですし、お互いに関係性が悪くなるようなことにはしたくありません。一緒に会社を作っている仲間として、どういう形でコミュニケーションをとるのがいいのか、ずっと模索しています。この会社は従業員一人ひとりを大切にしていかないと成り立ちませんので、月1回の経営会議でもいつも“人”のことについて話し、常にアップデートしています。」

エンジニアが疲弊しないように教育プログラムを充実させ、それぞれが納得して仕事ができるよう配属についても話し合いで決めるなど、一人ひとりが活躍できる環境を整えている

最後に、従業員の人材育成の工夫とその背景にある想いについてお話を伺った。

「当社では、お客様の目の前でアプリを作って見せて、システムを開発・改善するという対面開発の手法を大切にしています。発注者とシステムを開発する下請け業者という上下関係ではなく、対等に一緒にものを作っていくチーム、という考え方でずっと続けてきています。当社とお客様の間で信頼関係を結べることが売りだと考えていますし、そうやって新規業務を増やしてきました。」

「従業員自身が仕事を面白くないと思っていたり、会社に不満があったりする状態では、絶対にお客様にいいものを提供できません。反対に、メンタルヘルスが安定していたら、絶対幸せになれるシステムを作ります、と自信をもってお客様に提案することができます。それが信頼として会社に還ってくるということだと思っていますし、それに取り組んできた結果、会社はどんどん大きくなっているところです。」

「システムはなんらかのバグが出ることが必ずあるのですが、お客様と信頼関係を結べていないと、とても大きなトラブルになります。一方で、信頼関係が結べていると、対応もスムーズにできるので、リカバリーも早いです。これまでのシステム開発業界では、発注者と下請け業者のような感じの構造になりやすく、とにかく言われたものを作らなければならないという環境の中で疲弊してきたエンジニアがたくさんいました。そうではない世界観を作りたいというのが私たちの会社の理念であり、楽しく一緒にチームになってシステムを開発することはできるはずだと思っています。そのため、チームになって仕事ができないお客様からのご依頼はお受けしないようにしたいという思いがあります。だからこそ、私たちがお客様を選べる状況を作るべく、スキルも磨かなければいけないし、信頼関係を築ける人にもならなければならない、と考えています。」

「新人教育は、現在は体系立てた教育プログラムがあります。以前は師匠と弟子という感じで、とにかく見て学べという形だったのですが、それだと成長度合いも遅いですし、新卒採用も開始したことで、初歩から教育する必要が出てきたので、整備しました。教育プログラムの主な内容は、ドリルと、ヒアリングのロールプレイ、案件ごとの振り返りです。ドリルは社内アプリ上にあり、技術を学んだり、知識を増やしたりする内容です。課題を行ったら提出して、それを先輩が確認しています。ヒアリングのロールプレイングは、社内の他の従業員をお客様に見立てて、毎週行っています。新入社員が、いきなりお客様にヒアリングをしながらシステム開発をするなどということはできませんが、ロールプレイングを繰り返すことで少しずつ身についていきます。また、案件ごとに新入社員が担当者と一緒に、見積金額が妥当だったのか、どういう課題があったのか、といったことを振り返っています。少しでも早く一人前になってもらうためにどうしたらいいのか、どうしたら早く確実に知識を得られるのかということを、先輩たちからも還元してもらい、常に教育プログラムのアップデートを繰り返しています。」

「また、新卒入社員の教育期間は3か月間確保していて、その間に、当社にあるすべてのジョブをOJTで経験することとしています。エンジニアの業務だけではなく、請求業務やサポート業務など、なんでも知っていた方が、お客様に提案しやすくなると思っていますので、幅広く知る機会を多く作ることを意識しています。中には、エンジニアがやりたいと入社したけれども、3か月の経験を通して別の業務の方が得意だったとわかることもあります。3か月の教育期間の中で、一人一人の適性をある程度見極めて、配属について相談しています。一度配属した後も、当社にある仕事の範囲であればジョブチェンジは可能です。『まだ迷っている』や、『あっちの業務にも興味がある』といった時には、私たちが調整してそれらの業務をまず経験してもらっています。全然適性がないのに、その部門にいて、仕事ができないと評価されるのは嫌じゃないですか。そこを見極めるのも提案するのも私たちの役割だと思っているので、活躍できそうな部門を本人にも伝えて、選択肢の中から選んでもらっています。配属についても、上から一方的にここと決めるのではなく、新人でも3か月の教育期間の経験を通じてどの業務をやりたいと思ったかを聞いて、私たちの中でも話し合って、本人が納得する形で所属してもらうようにしています。」

【写真】イベント 「次のステップとしてこういうことをやってみたい、ジョイゾーにこれを還元したいから一旦外に出てみたい、青年海外協力隊に行きたい、など転職の話もあります。会社としては、せっかく育ってきたところなのにという気持ちもありますが、『本人たちがやりたいと思うところに行く』という選択肢を見つけてもらえたのがよかったという気持ちがまずあります。嫌だから辞めるのではなく、次にこういうことをやってみたいと思って辞めていくのであれば、後押しするしかないです。もちろん人員不足で困ることもありますが、やりたいことはやってもらいたいですし、『行った先でジョイゾーのことを宣伝してね』といった気持ちで送り出ししています。」

「もちろん当社で働き続けてくれることはとてもうれしいことですが、他で本人たちがやりたいことを実現しながらも、ジョイゾーを見てくれていることが当社としてもいいことだと思っています。嫌々ながらジョイゾーにしがみつかないと生きていけないという状態にはなってほしくないので、それぞれが活躍できる環境をこれからも作っていきたいと考えています。」

【ポイント】

  • ①リモートワーク中心だからこそ社内コミュニケーションの活性化を意識し、バーチャルオフィスや社内チャットを上手に活用している。
  • ②自己評価や他者評価の機会を意識的に設けることで、上下関係での意識のすれ違いが生じにくい環境を作っている。
  • ③エンジニアが疲弊しないように教育プログラムを充実させ、それぞれが納得して仕事ができるよう配属についても話し合いで決めるなど、一人ひとりが活躍できる環境を整えている。

【取材協力】株式会社ジョイゾー
(2024年2月掲載)